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アイスショーレポNo.4~ Fantasy on Ice 2015 in KANAZAWA ~

4年ぶりに金沢で開催されるファンタジーオンアイス。梅雨とは言え、吹き付ける冷たい雨に少し気分が滅入ってしまう。しかしショーが始まれば、ここは幕張とは違う特別な空間だとわかる。

鈴木明子さんの「月の光」

まさか、この金沢で自分が探していたものが見つかるなんて。今まで何度も聞いたはずなのに全く別の作品に聞こえてくる。ピアニストの福間洸太朗が放つ繊細ながらも力強い旋律がスケーターとプログラムに息を吹き込む。

ピアノ演奏の「月の光」と羽生結弦。

すごいものが生まれてくる予感。もうすぐ七夕だから言ってしまおう。

「月光に導かれるゆづ、叶いますように☆」

金沢公演では、洗練された大人の滑りのトマッシュに魅せられ、ジェーニャとマートンのトリノコンビに興奮し、岡本知高の「トゥーランドット」で舞うステファンの端正な滑りにときめいてしまった。昌磨君も織田君も安藤さんもジョニーも幕張よりも数段、ブラッシュアップされてる。

しかし何と言っても羽生結弦の新エキシビションにつきる。

「天と地のレクイエム」

当日まで新エキシの情報を入れないようにしていた。暗転の中から緊張感が伝わってくる。切ないピアノの旋律が始まり、スーッと氷上に平伏す。これは白鳥の続きなのだろうか。テンポを外したタメのある動き、体の使い方が今までとは違う。こんな動きをいつ覚えたんだろう。音楽と一体化してて、すぐに目が離せなくなる。

彼にしては少ないと言える二つのジャンプ。最初はループ。ループならスピードが必要ないからか。このプロにスピードは似合わない。ハイドロもSEIMEIとは違い柔らかく円を描く。次のジャンプは覚えてない。このプロにジャンプはいらない。

物憂げに首の後ろに手を回す。苦しくて、必死にもがき、どうやっても振り払えない。怒りと悲しみが伝わってきて耐えられない。

 失ってしまったもの、その痛みをあるがままに受け入れよう。祈りと共に。そんな風に感じてしまう。

このプログラムに込めたメッセージはまだ語られてない。4年前、彼を勇気づけスケーターとして再スタートをきった神戸。阪神大震災からちょうど20年。故郷に希望の光を照らした神戸。その神戸公演に向けたものなのか。スケーターとして大きく成長し4年経った今だからこそ向き合えるものがある。

あらためて彼が稀有なスケーターであったことを思い知らされる。

演技を終え涙を拭い挨拶する彼にそっとバナーを広げた。「ありがとう」のメッセージを込めて。

すぐに始まるフィナーレがこれほどキツいと感じた事はない。しばらく自分の気持ちを鎮めるのに時間がかかってしまう。終わってからも鎮まることはなかった。待ち合わせた友がいるのに荷物をまとめる手が止まってしまう。

彼は、このプログラムを演じるために生まれてきたのだろうか。

今年3月に訪れた福島の春を思い出していた。

さえずりながら空高く飛ぶヒバリ。

まっすぐに伸びた南相馬の一本松が眩しかった。

南相馬の松

(by tR)

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